船は海でどうやって道が分かるの?
車の運転は道を知っていれば、目的地までたどりつけます。道路は整備されセンターラインの中央線で対向車線と区切られているので、車同士がぶつからず安全です。信号機があり、止まるタイミングもわかります。
これらは当たり前の話ですが、海の上だとどうでしょう。道やセンターラインもなく、信号機だってありません。船は海の上でどうやって、道や目的地がわかるでしょうか。
現在地を知る方法
目的地に向かうには、自分の船の位置を知る必要があります。位置を知る方法として代表的な計測方法は以下の3つです。
GPS航法
衛星からの信号で船の現在地を把握する方法です。人工衛星からの電波情報から計算する仕組みです。電波を受信した時刻とその差である電波伝播時間と光の速度である電波速度を使います。「人工衛星との距離=電波伝播時間×電波の速度」。こうして人工衛星と受信機アンテナの距離が求められます。船の位置を知るために必要な人工衛星は1機だけでなく、人工衛星4機が必要です。各4つの衛星距離が交わる点が船の現在位置となります。
電波航法
陸からの電波を受信して、現在地を把握する方法です。地上局や航空機から電波を発射し、電波装置で受信します。電波を利用して位置や航路を測定する方法として、機上レーダーと地上レーダーによる、レーダー航法。長距離電波航法であるロラン航法、使用周波が70-130kHzの地上系電波航法システム、デッカ航法などがあります。GPSと違い、地上や上空からの電波を利用し、船の現在位置を特定します。
天文航法
太陽や月、星を利用して現在位置を特定する方法です。GPS航法や電波航法などの技術がまだ発展していない頃に使われていました。物体の角度や距離を測定する道具である、六分儀を使います。天体と水平線上の高度で六分儀を用いて船舶や航空機の位置を特定する航海術です。
海の上で位置を知る技術は長い年月をかけて進化し、正確に船の位置がわかるようになりました。
船の周囲と進む方向
位置が確認できても目的地までの道のりで、周囲の様子や進む方向を知る必要があります。陸地が見えない海ではどのように進む方向を決めているのでしょうか。
周囲の様子は船についているアンテナから電波を発し、対象物に当たるとはね返ってくる電波を利用して周囲の様子を確認。暗闇の中でも船同士が距離感を保ち、ぶつからないようになっているわけですね。
船の方向を知る方法としては、2種類。コマで方向を示す「ジャイロコンパス」と磁石を利用した「磁気コンパス」です。ジャイロコンパスは高速で回るコマの方向が、一定方向を指す性質を利用した計測方法。電磁波に影響を受けないメリットがあります。磁気コンパスは、磁石が南北を示す性質を利用した計測方法。故障が少ないメリットがあるので、ジャイロコンパスと併用して使われています。
陸地も交通ルールがあるように、海の上でもさまざまな計測技術を駆使して交通の安全が保たれているのだとわかりました。